第63回正倉院展に行って参りました。
14年ぶりに公開されている蘭奢待(黄熟香)を見るのが目的でした。
その存在を知ったのは十数年前に読んだ歴史小説の挿絵ででした。
それ以来、歴代の権力者(足利義満、義政、織田信長、明治帝など)が切り取ってその香りを楽しんだと言われる天下一の名香を一生に一度はこの目で確かめたいと思っていました。
挿絵の印象では50センチ程度のものかと思っていましたが、さにあらず、160センチ近くあるものでした。
展示場では透明のケースに収まっていて、360度、どの角度からも鑑賞できました。
何度も何度もぐるぐる廻って目に焼き付けている私の様は係の方に訝しく思われたかもしれません(笑)。
その場でスケッチしようかと思いましたが、なぜかやめました。
イメージを脳に納めただけでもう充分といいますか、余計なことのように思え、一生の思い出に大事にとっておこうと。
そういうことってあると思います。
その他の宝物いずれもすばらしく、色彩鮮やかでありながら、ミニマルな美しさを感じさせるものがほとんどで、我が国の美意識の高さを再認識した良い日となりました。
出典:東瀛珠光 第3集, 初版, 審美書院, 東京, 明治41年11月30日
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