「踊り場」にて

当店は平成27年5月15日に5周年を迎えました。

日頃ご来店くださるお客様、そして支えてくださる関係者の皆様に心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

創業以来必死に営んできた記憶ばかりで、あっという間の5年間でしたが、こうやって落ち着いて振り返ると、かなり感慨深いものがあります。

なぜこの喫茶葦島を創ったのかについては、メインサイト「喫茶葦島の理由」において設立趣旨という点で書いておりますが、実のところ一方では創業者である私の職業観を実現したい、世に問いたい、という個人的な想いもありまして、その点については今まで特に公表をしてきませんでした。

特に公表をしてこなかったのは、創業者の職業観というような個人的思想を、喫茶店経営において何も実績のない私が述べたところで説得力はほとんどないだろう、というのが理由です。

そして、実際この5年間で私の中で起こった変化や成長は大変激しく大きいものでした。創業時において世に問いたいと密かに抱いていた志は、実業という現実を日々突きつけられる中で、しぼんだり、逆に膨らんだりしながら、変化と成長を繰り返して行きました。

そのような日々を重ねるなか、当初は多くの目標を掲げていたはずなのですが、次第にお客様にとって心からくつろげる喫茶店であるためにはどうすればよいのか?本当に美味しい珈琲とはどう作るのか?というシンプルな目標に研ぎ澄まされてきました。まさに選択と集中の局面に至ったわけです。そのような局面において、もう一度原点に立ち戻る必要があると考えたのが、このちょうど創業5年目のタイミングでした。

そこで今、創業から今までの5年間の道程を振り返り、経験を踏まえた上で改めて思考を整理し、次へのステップを踏む前の「踊り場」として私個人の想いを記しておこうと思います。

【普遍性ある良いものを創り遺したい】
創業するにあたって最大の目的は「喫茶葦島が永続すること」でした。そして永続するには何が必要かと考えました。その答えを今ここで詳細に述べることはできないのですが、その答えを導くための指標となる考えが標題の言葉です。良いか悪いかというのは一概に決められないことだけに、あえて「良い」と言うには相当の覚悟が必要です。しかしどのような仕事においても良いとされる価値観、言い換えれば倫理観はきっとあるはずで、それをもとに日々のサービスや商品を作っていくことが大切だと思います。そしてその考えは創業以来変わらず今に至っていて、当店の接客技術や珈琲をはじめとする全ての商品に具体的に反映するよう努めています。

【中庸な経営】
簡単に言えば偏りのないバランス良い経営です。当店のサービスにおいて全てのものに反映されている概念です。すなわち珈琲を含めた商品ラインアップ、インテリアや設備の構成、広報活動、接客技術などに込めています。

【手仕事にこだわる】
当店において珈琲の抽出はハンドドリップによって行います。開店前は機械抽出やサイフォンも検討しましたが最終的にハンドドリップに決定しました。そしてその判断は正しかったと思います。ハンドドリップによる香味の表現はまさに手仕事ならではのもの。これからも唯一無二の味を目指して、とことんハンドドリップにこだわっていきたいと思います。

【商品としての珈琲の味は論理的思考で追究する】
美味しい珈琲とはどのような珈琲でしょうか?珈琲はあくまで嗜好品ですから、美味しさの評価尺度は万人共通ではありません。しかし我々プロはより多くの人が美味しいと感じられる珈琲をつくることを目指すべきだと考えます。ではより多くの人が美味しいと感じられる珈琲を提供するためには何が必要なのでしょうか。
思うに、きちんとした材料(豆)を選ぶこと、その選んだ材料を適切な方法で調理(焙煎→保存→抽出)すること、適切に調理したものを、良いタイミングと良い環境で提供すること。以上が基本的に必要なことだと考えます。そして、「きちんと」「適切に」「良い」を判断するに大切なこととして私が常に心がけているのが『論理的思考』です。ただ、ここで言う論理とは次のような意味でそれを定義付けしています。すなわち「事物の間にある法則的な連関」という意味です。

【丁寧こそ効率良い】
当店のサービスについてその特徴を一言で表すと「丁寧」です。確かに丁寧にこだわれば時間や手間がかかることが多いのですが、逆に雑にした結果失敗し、やり直すことを考えれば、結局のところ効率が良いと考えています。そして丁寧な所作の美しさも重要と考えます。

【人材採用は倫理観を重視する】
企業は人なりの言葉通り、どのような人材を採用し、どのように育てるかは大変重要です。採用の際に最も重視するのがその人がどのような倫理観をもっているかです。もっとも採用段階では把握しきれない場合もありますから、その場合は教育が必要となります。しかしながら倫理観を教えるというのは非常に難しいものがあります。例えば時間にルーズな人をすぐに時間に正確な人に変えられるものではありません。ミスをごまかしたりする人を正直な人に変えていくなど至難のことです。しかし、それができないからとすぐに諦めるようでは経営者失格と思います。どのように処していくかで経営者の倫理観も問われますから非常に難しい問題です。現在も日々勉強しています。

【誠実に優る知恵なし】
もはや説明不要かと思われますが、この言葉の重みを日々噛み締めております。

以上は、私がこの5年間、どのような職業においても通用する考え方ではないかと仮説をたてて実践してきたことを整理しなおしたものです。しかしまだまだ成長過程にある未熟者であります。
これから創業10年、50年、100年とここ京都で確かな歩みを刻んでいくためにも、喫茶葦島ならびに葦島珈琲がお客様にとってなくてはならない存在になれるよう、引き続き丁寧に仕事をしてまいります。

今後とも末長くよろしくお願い申し上げます。

店主拝

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