武道を幼少から続けてきた。
途中でスポーツの世界に鞍替えした時期もあったりしたが、結局大人になってからは武道の世界に戻り、今も稽古を続けている。
武道にスポーツ以上の魅力を感じているのは確かである。
武道もスポーツの一部であるという考え方もあるが、私個人としては全く違うものだと思っている。
ただ、ここで言いたいのは、両者の定義がどう違うのかとか、どちらが優れているとか、そのような話ではない。
自分の感性により近いものを武道の世界に見出しているだけに過ぎない。
例えば、私がかつて所属していた武道団体の試合では、勝負に勝ったとしてもガッツポーズを決してしてはいけなかった。
スポーツの試合で勝ってガッツポーズを極めるのはごく自然のことだが、武道の試合では好ましくない行為の一つだった。
私は、武道のもっているそのような価値観がたまらなく好きなのである。
とはいっても、野球やサッカーといったスポーツの試合を観戦するのは大好きであるし、ホームランやゴールを決めた選手がガッツポーズをする姿を見るのも醍醐味だと思う。そういう時は私も同じようにガッツポーズをする。
しかし、こと武道の世界においては、そのように華やいだ、いい意味での賑やかしさはそぐわないと思われるのだ。
これは、そもそも武道の本質が人間の「死」と密接不可分な関係にあるからだと思う。つまり、修行を積んだ末に雌雄を決するその「場」は、常に死と隣り合わせの戦場(いくさば)であり、そこにおいてふさわしき空気は、荘厳かつ静謐で、侵しがたいものであるべきだと考えている。
そう考えると、ガッツポーズについても、スポーツの世界ではごく自然なことが、武道においてはふさわしくないとされてもわかるような気がする。
そして、その価値観を伝統として守り続けていくことの尊さに気づいた時から、武道が道であることの本質に近づけるのではないかと思っている。
そこまで近づくには、まだまだ修行が足りません。
店主